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第790回 【研究紹介】ガウシアン尺度混合表現に基づくRRインターバル分布の非ガウス性の捕捉

2026.05.14

本研究グループでは,長年にわたって生体信号のモデル化と識別に関する研究に取り組んできました.最近では,古居 彬先生(広島大学大学院先進理工系科学研究科情報科学プログラム 准教授)を中心に,筋電位や脳波,心電図などの統一モデル化技法の確立を目指してスケールミクスチャモデル(尺度混合モデル)を開発し,医工学分野やヒューマンインタフェースへの応用を視野に入れて研究を行っています.
https://fka-bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/18211
https://fka-bsys.hiroshima-u.ac.jp/news

今回新たに,心電図のRRインターバルのモデル化にスケールミクスチャモデルを適用した論文が掲載されました.この論文はD3の萩山 直紀君(MEグループ,NTT株式会社)の博士学位論文の一部になる予定です.この論文誌”Heliyon”はCell Pressから発行されているオープンジャーナルで,Web of Scienceの”MULTIDISCIPLINARY SCIENCES”というカテゴリーのQ1ジャーナル(Journal Impact Factorによるランキング)です.おめでとうございます!

今後も本研究チームとともに研究を継続し,さらなる研究成果につなげていければと思っています.

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Capturing non-Gaussianity of RR interval distributions based on Gaussian scale mixture representation
Naoki Hagiyama, Akira Furui, Harutoyo Hirano, and Toshio Tsuji
Heliyon, Volume 12, Issue 6, e44737, pp.1 – 12, DOI:10.1016/j.heliyon.2026.e44737, April 2026.(SCIE, IF=3.4)
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<論文内容>
本研究は、RR間隔(RRI)の振幅分布が示す非ガウス性に着目し、その統計的特徴をより精密に捉えるためにGaussian Scale Mixture(GSM)表現をRRI解析へ導入したものである。RRIは自律神経活動を反映する重要な生理指標であり、従来のHRV解析は時間領域・周波数領域の変動量に基づく指標が中心であった。しかし、RRIの分布形状そのものが心不全や急性心筋梗塞の予後と関連することが報告されており、非ガウス性の定量化が新たな診断的価値を持つ可能性が指摘されている。
本研究では、RRIの分散が潜在変数によって変動するというGSMの枠組みを用い、特にStudentのt分布およびGeneralized Gaussian Distribution(GGD)を適用した。PhysioNetの6データベース(成人健常・乳児・心疾患患者)を対象に、18時間のRRIをLF(0.04–0.15 Hz)およびHF(0.15–0.40 Hz)帯域に分離し、標準化したsRRIに対して各分布をフィッティングした。適合度はL2ノルムで評価し、さらに解析窓長の影響、人工期外収縮に対する頑健性、心疾患識別性能を検証した。
結果として、Studentのt分布が最も良好な適合度を示し、RRIのheavy-tailed特性を最も適切に表現した。非ガウス性指標(1/ν, 1/α)は人工的な期外収縮に対して従来の周波数指標より変動が小さく、外れ値に対して頑健であった。また、成人患者および乳児では健常成人より非ガウス性が強く、群間差が明確に観察された。さらに、非ガウス性指標を従来のHRV指標に加えることで、心不全・高血圧の識別性能(AUC ≈ 0.835)が向上し、従来指標と相補的な情報を提供することが示された。
以上より、GSMに基づく非ガウス性解析はRRIの統計的特徴を高精度に捉え、心疾患リスク評価の改善に寄与する有望な手法であると結論づけられる。